韓国の税務・会計資料

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March 03, 2023
by swacc

国際取引に対する二重課税負担の軽減制度

国際取引する二重課税負担軽減制度


 最近、国税庁の報道によると、国税庁が外国の課税当局と合意して処理した相互合意処理実績は2018年~22年の5年間、年平均39.3件で、13年~17年の平均20.2件より94.6%増加したことが分かった。 また納税者の正常価格方法事前承認申請は18年~22年の5年間、年平均58.6件で13年~2017年平均48.2件対比21.6%増加した。 二重課税問題解決に対する需要が着実に増加していると言える。 18年国税庁が相互合意担当官室を設置し、二重課税解決手続きを申請しやすくしたことが相互合意、移転価格事前承認申請件数を増やしたもう一つの要因とも言える。 外国に進出して事業を展開している企業は、常に国際取引において二重課税、移転価格などの国際租税問題を抱えているものである。 ここでは、このような二重課税問題を解決するための税法上の制度について簡単に見ていくことにしよう。


 納税者の二重課税問題を解決する方法としては、大きく事前解決方法と事後解決方法があると言える。 韓国が各国と締結した租税条約と国際租税調整に関する法律では、事後解決方法として課税分相互合意(Mutual Agreement Procedure、MAP)手続きと事前解決方法として、正常価格方法事前承認(Advance Pricing Arrangement、APA)手続きを設けている。


 相互合意手続きは租税条約に符合しない課税処分などがあったり予想される場合、これを解消する目的で租税条約と国際租税調整に関する法律第22条にともなう締約当事国間の協議手続きだ。 相互合意手続きは納税者の申請を前提とし、納税者は国際租税調整に関する法律に規定された様式に従って相互合意手続きの開始を申請する。 相互合意手続きの開始申請がある場合、企画財政省または国税庁はまず該当開始申請が相互合意手続き開始拒否理由に該当しないかを検討する。 開示拒否事由は、国内または国外において裁判所の確定判決があった場合、租税条約上申請資格のない者が申請した場合、納税者が租税回避を目的として相互合意手続を利用しようとする事実が認められる場合、課税事実を知った日から3年を経て申請した場合等をいう。 検討結果の開示拒否理由に該当しない場合、企画財政省または国税庁は締約相手国に相互合意手続きの開始を要請する。 締約相手国が韓国側相互合意手続きの開始要請に同意する場合、両当局は協議手続きに着手することになり、その協議結果によって租税条約に符合しない課税などを除去することになる。 しかし、相互合意の結果は類似争点事案の先例にならず、同じ納税者の他の課税事案に対する拘束力もないという特徴があると言える。


 正常価格算出方法事前承認制度は納税者が国外特殊関係者との取引で適用する正常価格決定方法および正常価格範囲に対して課税当局と事前に互いに合意する制度をいう。 移転価格課税とは、企業が国外特殊関係者との取引において正常価格より高かったり、低かったりする価格を適用することによって課税所得が減少する場合、課税当局が正常価格を基準に課税所得を財界傘下にして租税を賦課することをいう。 このような国際取引に対する移転価格課税にともなう二重課税危険を事前に除去するために導入されたのが正常価格算出方法事前承認制度であり、正常価格算出方法の事前承認は納税者の申請と国税庁長の承認という形式で行われる。APA承認を受けた納税者は、APA対象期間中に承認当時に設定された前提条件を満たす限り、国税庁長が承認した方法を使用し、これは国税庁から最も合理的な方法として認められることになる。 APAは、国際取引関連の両国課税当局間協議が必要な双方(Bilateral)APAと両国間協議なしに一方の課税当局とだけ締結する一方(Unilateral)APAがあるが、移転価格関連の二重課税問題を完璧に解決するためには、双方APAが望ましいと言える。 ただし、双方APAの場合、他の課税当局との協議手続きを経るため、一般的に一方APAより所要期間が多少長くなる傾向がある。


 国内に進出した外国企業と外国に進出した国内企業はいずれもこのような国際租税リスクを抱えており、最近のデジタル税Pillar1とPillar2の導入など国際租税での課税強化の動きを見れば、移転価格事前承認や相互合意申請がさらに増えるものと予想される。 国際取引が多い企業は、国際取引リスクをもう一度点検する必要があると言える。


<筆者紹介>
信和会計法人は、2003年設立され、韓国進出を目指している企業、または進出済みの日本企業向けに、法人の設立に関するご相談及び設立代行、会計、税務、給与サービス、支給代行サービス、会計監査、デューデリジェンス(Due Diligence)サービス等を提供しております。大手会計法人の日本事業部出身のベテラン会計士を中心に設立され、豊富な経験とノウハウを活かし日系企業のクライアント様に最善のサービスを提供しております。
今回の担当:張太日(チャン・テイル)公認会計士(韓国)。英和会計法人(現在、Ernst&Young韓英会計法人)にて勤務。日本太田昭和監査法人(現在、新日本有限責任監査法人)にて派遣勤務。現在は信和会計法人の国際部代表。(TEL: 02-555-9211/E-mail: tichang@swacc.com)


<出典:NNA ASIA アジア経済ニュース、2023.2.9 https://www.nna.jp/> 



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