韓国の税務・会計資料

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May 15, 2023
by swacc

小規模企業会計監査基準新設


小規模企業計監査基準新設


 金融委員会は2023年2月15日付で韓国公認会計士会が制定した小規模企業財務諸表に対する監査基準を承認した。 すなわち、会計監査基準に監査基準書1200「小規模企業財務諸表に対する監査」を新設し、外部監査対象企業のうち➀資産200億ウォン(約20億8,300万円)未満または➁ 売上高100億ウォン未満の非上場企業に対しては簡素化された監査手続きを適用するようにしている。 しかし、小規模企業でも利害関係者が多く、監査リスクの高い➀ 上場予定企業、➁ 連結財務諸表作成企業、➂ 金融会社、➃ 事業報告書提出対象法人、➄ 監査人職権指定法人は適用対象から除外し、一般監査基準を適用するようにしている。


 金融監督院の資料によると、22年度の外部監査対象会社は計3万7,519社で、このうち資産規模100億ウォン未満の会社が2627社、資産規模100億ウォン~200億ウォンの会社数が1万1286社で、全体規模対比約37%に該当する会社が資産基準では小規模企業に分類されている。 売り上げ基準資料は出ていないが、概算して外部監査対象会社の中で3分の1を越える小規模企業が会社規模に比べれば過重な会計監査負担から抜け出すことができるものと見られる。 ただし、この改正基準の適用は、23年1月1日以降開始される会計年度の財務諸表に対する監査から施行されるため、23年3月現在進行中の22年度の会計監査には既存の会計監査基準を適用することになる。


 新設の小規模企業の会計監査基準は、既存の監査基準で要求する多くの手続きを大幅に簡素化し、小規模企業の監査に必ず必要な核心手続きだけを残したが、その特性があると言える。 既存の監査基準の主題別34基準書の約760文段を小規模企業財務諸表に対する監査基準という153文段の単一基準書に圧縮簡素化し、業務の流れに従うように構成した。 また、一般監査基準はリスク評価と内部統制テストなど実証手続きのための事前監査手続きの比重が高い方だったが、小規模企業監査基準は内部統制評価などの事前監査を減らし実証手続き、すなわち監査人が財務諸表金額に対する直接証拠を入手する手続き中心に監査を遂行するようにしたことにもう1つの特徴があると言える。


 小規模企業監査基準の簡素化された主な手順を見ると、まず➀ リスクアセスメント手順の簡素化が挙げられる。 小規模企業監査基準では監査人が理解しなければならない会社の内部統制要素を減らした。 すなわち、リスクアセスメント手順、コミュニケーション、モニタリングは理解範囲から除外し、統制環境と情報システムのみを理解範囲に含めた。 内部統制運営効果性テストは会社の内部統制を考慮して実証手続きを縮小する場合にのみ遂行するようにするなど内部統制評価手続きを簡素化させた。 監査人はペーパーワークが減り、企業では中間監査時の資料準備、担当者インタビューなどの負担が減るものと予想される。 また、収益認識に不正が存在すると見なす代わりに、不正が存在するかどうかを監査人が判断するようにし、継続企業存続能力に疑問がある場合にのみ評価手続きを遂行するようにするなど、他のリスク評価手続きも簡素化した。 ➁支配機構とのコミュニケーションも小規模特性上、所有と経営が分離されていない企業が多い現実を反映し、所有経営陣を支配機構と見る根拠を提供してコミュニケーション負担を減らし、義務的なコミュニケーション項目は小規模企業特性に合わせて縮小した。 ➂重要性決定でも金融監督院の標準重要性金額を重要性基準として使用したり、重要性基準金額を高める根拠を用意して監査範囲を調整できるようにした。


 既存の監査基準では、大企業を想定して膨大な手続きを求めており、小規模企業には資料準備、監査対応、費用等の外部監査負担が高かったが、今回の改正により、小規模企業に対しては、小規模企業に合わない不要な監査手続きを最小限に抑え、監査人が中核的な監査手続きに集中するようにし、監査品質は維持しつつ外部監査負担は軽減するものとみられる。 これに伴い、監査所要時間の短縮も予想され、会計監査費用面でも負担が緩和されるものと見られる。



<筆者紹介>
信和会計法人は、2003年設立され、韓国進出を目指している企業、または進出済みの日本企業向けに、法人の設立に関するご相談及び設立代行、会計、税務、給与サービス、支給代行サービス、会計監査、デューデリジェンス(Due Diligence)サービス等を提供しております。大手会計法人の日本事業部出身のベテラン会計士を中心に設立され、豊富な経験とノウハウを活かし日系企業のクライアント様に最善のサービスを提供しております。
今回の担当:張太日(チャン・テイル)公認会計士(韓国)。英和会計法人(現在、Ernst&Young韓英会計法人)にて勤務。日本太田昭和監査法人(現在、新日本有限責任監査法人)にて派遣勤務。現在は信和会計法人の国際部代表。(TEL: 02-555-9211/E-mail: tichang@swacc.com)


<出典:NNA ASIA アジア経済ニュース、2023.3.9 https://www.nna.jp/>



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