韓国の税務・会計資料

韓国の税務・会計資料

  • > home - 韓国の税務・会計資料

May 15, 2023
by swacc

24年から、上場企業の公示情報が英語でも提供


24年から、上場企業の公示情報が英語でも提供


 2024年からは、韓国総合株価指数(KOSPI)市場に上場している大企業は重要な情報について、韓国語の公示に加えて英語の公示資料も提出しなければならない。韓国の証券市場は、外国人株主比率が22年末現在でKOSPI市場全体の時価総額の30.8%に達しているにもかかわらず、外国人投資家に対して十分な英語情報が提供されていないという指摘が出てきた。 現在でも一部の資料は英語で提供されてはいるが、これは証券取引所のシステムによる公示資料などの英語自動変換および企業の自主的な英語公示提出に依存しているため、「22年間のKOSPI上場企業のうち、取引所に英語公示を行った件数は合計2,453件で、韓国語公示の約13.8%の水準に過ぎず、外国人投資家の情報アクセス性の面でまだ不十分な面がある」と言える。アジア諸国の中で香港やシンガポールは、グローバル競争力を高めるために公示言語を英語に採用しており、台湾は外国人持分比率が高い法人などの事業報告書など英語公示を義務付けているなど、他のアジア国と比較して韓国の証券市場への外国人投資家のアクセスは制限されていると言える。


 これに対し3月29日、金融委員会と韓国取引所は英文公示義務化導入のために「韓国取引所有価証券市場公示規定および施行細則」を改正した。 これによると、大規模上場会社の重要情報に対しては段階的に英文公示が義務化された。 同改正規定によると、英文公示義務化の1段階措置は24年から適用される。 対象企業は①資産10兆ウォン以上のKOSPI上場企業のうち、外国人持分率5%以上の企業または②資産2兆ウォン以上10兆ウォン未満のKOSPI上場企業の中で外国人持分率30%以上の企業で、21年末基準で約106社がこれに該当する。 英文公示義務事項は取引所公示義務項目のうち①決算関連事項(例:監査報告書提出、資本蚕食発生、株式配当決定)、②主要意思決定事項(例:有償増資決定、自己株式取得決定)、③売買取引停止随伴事項(例:上場廃止決定、株式焼却併合決定など)であり、これらの公示事項については国文公示後「3営業日」以内に必ず英文公示をするよう規定を新設した。


 2段階の義務化措置は26年から施行する予定で、義務化対象法人および対象項目を拡大することを骨子としている。 2段階対象法人は資産2兆ウォン以上のKOSPI上場企業に拡大し、これは21年末基準で約234社(全KOSPI社の29%)が該当する。 第2段階で英文公示義務対象項目は、第1段階の取引所公示項目で一部を追加し、法定公示でも主要事項報告書、発行公示(例:証券申告書)に対する英文公示(英文要約本提出)義務化導入などを追加するなど対象項目を拡大しようとしている。 また、第1段階での国文公示後3営業日以内の英文公示提出期限を、第2段階では国文公示と同時に提出するようにする案も検討している。


 このような2段階の義務化は、まだ流動的なものと見られる。 当局は第1段階措置の定着状況を見ながら、第2段階措置を確定するものと予想される。 英文公示定着のために英文公示優秀法人に対するインセンティブ、専門翻訳業者翻訳支援サービスなど英文公示活性化のための支援方案も共に推進するなど英文公示拡散のための支援方案も並行するという。 また、英文公示の定着に障害となりうる誤訳などにともなう外国人投資家の訴訟提起リスクに対しては、英文公示は投資参考用であり、国·英文不一致時に国文が優先だという字句を公示時に共に掲示し意図的な誤訳、虚偽公示など上場法人の帰責が明白な場合を除いては誤訳にともなう責任を免除するようにしている。 英文公示義務化は韓国の資本市場で外国人投資家の情報接近性が向上するために必ず必要な措置だと考えられ、英文公示対象企業は大規模企業であり、ある程度英文公示に対応できるとは言えるが、初めて施行する義務化措置であるため、英文公示の早期定着には政策当局の多くの支援と時間が必要だろう。



<筆者紹介>
信和会計法人は、2003年設立され、韓国進出を目指している企業、または進出済みの日本企業向けに、法人の設立に関するご相談及び設立代行、会計、税務、給与サービス、支給代行サービス、会計監査、デューデリジェンス(Due Diligence)サービス等を提供しております。大手会計法人の日本事業部出身のベテラン会計士を中心に設立され、豊富な経験とノウハウを活かし日系企業のクライアント様に最善のサービスを提供しております。
今回の担当:張太日(チャン・テイル)公認会計士(韓国)。英和会計法人(現在、Ernst&Young韓英会計法人)にて勤務。日本太田昭和監査法人(現在、新日本有限責任監査法人)にて派遣勤務。現在は信和会計法人の国際部代表。(TEL: 02-555-9211/E-mail: tichang@swacc.com)


<出典:NNA ASIA アジア経済ニュース、2023.4.13 https://www.nna.jp/>



  • List