韓国の税務・会計資料

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September 27, 2023
by swacc

暗号資産会計処理透明性向上



暗号資産会計処理透明性向上


 2023年7月18日付で暗号資産利用者保護法が制定され、2024年7月19日から施行に入る。 そしてこれに合わせて会計基準院でも企業会計基準書第1001号「財務諸表表示」を改正する公開草案を発表した。 この公開草案を見ると、会計処理を新たに規定したものではなく、企業の暗号資産保有·発行に伴う会計政策、財務諸表への影響など財務諸表利用者に重要な情報を公示するよう求めている。 また、会計監督機関である金融委員会において暗号資産会計処理監督方案(案)を発表し、暗号資産会計処理における不確実性を大幅に減少させた。 該当指針が適用される対象は分散元帳技術および類似技術を使用し暗号化を通じてセキュリティーになり代替が可能で電子的に移転、保存できる暗号資産であり、資本市場法上証券をデジタル化したトークン証券も適用対象だ。 ここでは、新たに発表された監督案について簡単に見てみよう。


 監督方案は会計分野の有権解釈であり、新しい会計基準ではなく、現在適用中のIFRSを合理的に解釈して具体的な処理方向を提示するもので、今回の暗号資産関連監督方案は暗号資産関連取引主体と取引段階別に会計処理基準をより具体的に案内しており、主な内容は次の通りだ。


 まず、暗号資産発行者の会計処理は次のとおりである。 第1に、今までは会社が発行した暗号資産を顧客に売却して受け取った金銭代価を直ちに収益と認識できるかの多少不明な側面があった。 今後は販売目的ならば、収益基準書(K-IFRS第1115号)を適用し、会社が暗号資産保有者に対する義務を全て完了した後に暗号資産の売却代価を収益と認識するようにする。 遂行義務を明確に把握し、その義務の性格と範囲を考慮して収益認識時期を判断し、義務を完了する前に会社が受領した代価は負債と認識しなければならない。 また、極めて例外的な場合を除いては、発行会社に付与された義務の範囲を事後的に任意変更して負債と認識した売却代価の収益認識時点を繰り上げないようにする。 第2に、暗号資産およびそのプラットフォームを開発する過程で支出された原価は、暗号資産およびそのプラットフォームを無形資産と認識できない場合や関連開発活動が無形資産基準書(K-IFRS第1038号)で規定した開発活動に該当するという明確な根拠を提示できない場合、発生時の費用として会計処理するようにする。 もし会計基準上厳格な要件を満たし無形資産と認識する場合には、以後本質的価値の損傷有無について毎会計年度ごとに検討しなければならない。 なお、発行会社が発行後自己留保した暗号資産については、暗号資産に直接関わる原価のある極めて例外的な場合を除き、取得原価がないため財務諸表に資産として計上しないこととする。


 次に暗号資産保有者の会計処理は以下の通りである。 これまでIFRS解釈委員会(2019年6月)は暗号資産「保有」者に対して販売目的可否により無形資産または在庫資産に分類だけを提示したことにより暗号資産が資本市場法上トークン証券に該当する場合、金融資産·負債分類が許容されるのかについて疑問があった。 今後はトークン証券が金融商品基準書(K-IFRS第1032号)にともなう金融商品の定義を充足する場合には金融資産·負債に分類し関連基準書を適用できるようにした。


 暗号資産事業者(取引所)の会計処理は以下の通りである。 これまでは暗号資産事業者が顧客委託暗号資産を保有した場合、事業者の財務諸表に資産·負債と認識するかどうかを決めるにあたって考慮要素が不明な側面があった。 今後は暗号資産に対する経済的統制権を考慮して資産·負債認識可否を決定するが、国際動向などを勘案して顧客に対する法的財産権保護水準などを経済的統制権判断時に考慮するようにする。 すなわち、経済的統制権などが主な判断要素になるが、法的な財産権保護水準も同時に考慮して資産、負債計上可否を決めることになる。


 最後に、暗号資産は多様な状況で、公正価値で測定しなければならないが、公正価値測定において具体的に会社や監査人の統一された基準·手続きがなく単純基準書だけでは実務的に適用することが非常に難しい状況だ。 したがって、暗号資産取引において活性市場、公正価値などの概念に対する具体的条件を事例と共に忠実に提供し、会社と監査人が財務諸表作成と監査手続き遂行時に参考できるようにする。


 今回発表された監督方案と会計基準は年末までには確定し公表されるものと見られる。 したがって、2024年会計年度からは実務に適用されるものと予想される。 暗号資産発行会社、取引所、投資家はこれに合わせて会計システムを整備し、決算時の混乱がないようにしなければならない。


<筆者紹介>
信和会計法人は、2003年設立され、韓国進出を目指している企業、または進出済みの日本企業向けに、法人の設立に関するご相談及び設立代行、会計、税務、給与サービス、支給代行サービス、会計監査、デューデリジェンス(Due Diligence)サービス等を提供しております。大手会計法人の日本事業部出身のベテラン会計士を中心に設立され、豊富な経験とノウハウを活かし日系企業のクライアント様に最善のサービスを提供しております。
今回の担当:張太日(チャン・テイル)公認会計士(韓国)。英和会計法人(現在、Ernst&Young韓英会計法人)にて勤務。日本太田昭和監査法人(現在、新日本有限責任監査法人)にて派遣勤務。現在は信和会計法人の国際部代表。(TEL: 02-555-9211/E-mail: tichang@swacc.com)


<出典:NNA ASIA アジア経済ニュース、2023.9.14 https://www.nna.jp/>



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