韓国の税務・会計資料

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June 17, 2020
by swacc

公益法人の透明性





公益法人の透明性



非営利法人は、寄付金や政府支援、ボランティアの参加を基に、慈善事業、学術事業、宗教事業、その他公益的な事業を遂行する法人で、最近、その活動内容も多様化している。しかし、その公益的な性格と重要性に比べ、監視機能の弱さから寄付金の横領などのような不正行為もたびたびメディアで報じられており、国民を失望させている。


政府も最近、公益法人の透明性向上のため、法律や規定を新設または整備するなど、多大な努力を傾けてきている。


公益法人の会計または開示などに関しては、長い間、寄付金品の募集および使用に関する法律、公益法人の設立·運営に関する法律など様々な法律でそれぞれ規定されてきた。しかし、統一した会計処理基準もなく、会計または開示基準違反に対しても罰則がないため、公益法人が運営の透明性を高める要因とはなりえなかった。


しかし、政府は公益法人運営の透明性の向上のため、相続税および贈与税法上の公益法人の税務確認および監査条項を大幅に強化した。これに合わせて公益法人の会計基準も制定し、2018 年度から適用している。


強化された規定によると、従来は決算書などの開示義務を宗教法人を除いた資産が5億ウォン(約4,600万円)以上か、あるいは年間収入が3億ウォン以上の公益法人にだけ課したものを、宗教法人を除いたすべての公益法人に課すことにした。


また、資産規模100 億ウォン以上の公益法人にのみ適用されていた会計監査義務を、収入金額も追加で考慮するようにし、年間寄付金が20 億ウォン以上であるか、寄付金を含めた総収入金額が50 億ウォン以上の公益法人も必ず外部監査を受けるようにした。


ただ、従来のように宗教法人は外部監査の適用対象から除外した。そして公益法人が保有している財産の一定割合を必ず公益目的に使うようにする義務支出制度を拡大した。


また、2022 年からは一定規模以上の公益法人に対しては企画財政部が監査人を指定するように改正された。


このような規定以外にも、多くの規定が公益法人の運営透明性を強化するために導入された。また、このような規定に違反した場合は加算税が課せられ、賦課されたペナルティーが1,000 万ウォン以上になる場合は指定寄付金団体の指定が取り消される。


上記の通り、公益法人の透明化のために◇法整備◇会計基準導入◇会計監査義務化◇開示強化――などの制度が導入されたが、最も急がれるのは内部統制の強化とみられる。


公益法人の理事長など経営者の独断的な運営に対するけん制装置のない公益法人が多数であり、理事会が理事長の特殊関係者で構成されていたり、形式的な活動にとどまったりする場合が多く、職員の不正を事前に防止できる内部けん制制度が不備であることが多い。実務的には、小規模法人においては複式簿記適用による決算と開示のための会計担当職員の充員も問題となろう。


公益法人の透明性強化のための制度整備は始まったばかりとみられる。こういう公益法人の会計処理の透明化が定着するまではかなりの時間がかかりそうだ。公益法人はこれまでの惰性を捨てて倫理意識および内部統制を強化し、透明な会計開示と外部監査を通じて公益団体の信頼性を回復し寄付文化をさらに発展させていかなければならない。
 






<筆者紹介>


信和会計法人は、2003年設立され、韓国進出を目指している企業、または進出済みの日本企業向けに、法人の設立に関するご相談及び設立代行、会計、税務、給与サービス、支給代行サービス、会計監査、デューデリジェンス(Due Diligence)サービス等を提供しております。大手会計法人の日本事業部出身のベテラン会計士を中心に設立され、豊富な経験とノウハウを活かし日系企業のクライアント様に最善のサービスを提供しております。


今回の担当:張太日(チャン・テイル)公認会計士(韓国)。1963年生まれ。サンダーバード(Thunderbird)経営大学院でMBA取得。1989年~2003年に英和会計法人(現在、Ernst&Young韓英会計法人)にて勤務。1994年~1995年に日本太田昭和監査法人(現在、新日本有限責任監査法人)にて派遣勤務。現在は信和会計法人の国際部代表。(TEL: 02-555-9211/E-mail: tichang@swacc.com)



<出典:NNA ASIA アジア経済ニュース、2020.06.11 https://www.nna.jp/>



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