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May 14, 2021 |
グローバル租税改革グローバル租税改革 物理的事業場の制約を受けることのない米グーグルのような多くの多国籍IT企業が活動しているデジタル経済下では、売上高が発生する国と固定事業場が設置されている国との間に課税の不一致が発生する。 すなわち、固定事業場が所在する国で課税するという従来の国際租税原則によれば、サーバーが設置された国で課税が行われ、実際に売上高が発生する国では課税できなくなる。 また、多国籍IT企業は低税率国に無形資産を移転した後、そこで所得を計上することができるため、租税回避の問題も増えている。 これを受け、経済協力開発機構(OECD)は2012年から多国籍企業の課税逃れに対抗する「税源浸食と利益移転(BEPS)」プロジェクトに取り組んで、デジタル税の課税案を議論。2020 年の20 カ国・地域(G20)財務相会議で、デジタル税に対する基本骨格について合意し、21 年半ばまでは最終合意文を発表する予定となった。 基本合意によると、デジタル経済における租税問題の解決に向けて、新しい課税権配分基準(Pillar 1)と税源蚕食防止規定(Pillar 2)の導入を推進している。 Pillar 1は、デジタル経済下で市場所在地国の課税権を強化するための新しい課税権配分および利益帰属規則に関する議論。Pillar 2 は、多国籍企業が低税率国への所得移転を通じて租税を回避する行為を防止するための方策としてグローバル最低限税導入に関するものである。 Pillar 1 によれば、デジタルサービス事業(Automated Digital Services)と消費者対象事業(Consumer Facing Businesses)を営んでいる多国籍企業が、特定国家に固定事業場のような物理的実在がなくても、当該国家での売り上げが一定規模以上発生する場合には、当該市場所在地国の課税権を認めている。 すなわち、市場所在地国に固定事業場がなくても、一定基準以上の企業に対しては本社利益の一部を市場所在地国に配分し、市場所在地国で課税できるようにする新しい基準を提示している。 Pillar 2は、Pillar 1でも解決されない租税回避を防止するため、多国籍企業の国際取引を通じて発生した所得に対して合意された最低限税率(21%で議論中)以上に課税するようにする案だ。年間売上高が7億5,000 万ユーロ(約992 億円)以上の企業が対象であり、投資ファンド、年金ファンド、政府機関、国際機関、非営利団体などは適用から除外されるものと予想される。 米国のバイデン政府は、新型コロナウイルスで起こった経済不況から脱するために、大規模な景気浮揚策を実施する。不足する税収を充当するために、法人税を21%から28%に引き上げる予定だという。これと同時にグローバル最低限税の導入で税率引き上げによる資本流出を防ごうとしている。 米国がこのような事情で国際租税原則の改正に積極的に乗り出しているため、今年半ばにはOECDで最終案が通過するものと予想される。 しかし、実際、各国が法律の制定などを通じて施行するまでには、まだ1~2年の準備時間はあるものとみられる。 多国籍企業や海外進出企業の場合、企業全体としての租税負担の増加が予想されるため、税負担、投資金回収など海外事業戦略の再樹立などの事前対策が必要な時点と言えよう。
<筆者紹介>
<出典:NNA ASIA アジア経済ニュース、2021.5.13 https://www.nna.jp/> |
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