韓国の税務・会計資料

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June 18, 2021
by swacc

週52時間労働時間制の拡大適用

週52時間労働時間拡大適用

 


 週52 時間労働時間制が、2021 年7月1日から5人以上の事業場にも適用される。週52 時間労働時間制は、勤労基準法の改正を受けて18 年7月から施行されているが、中小企業に対応する時間を与えるため、まず300人以上の企業と公共機関を対象に施行された。

 

 その後、20 年1月1日からは労働者50 人から299人までの企業に拡大適用され、1年間の指導期間を経て、21 年1月1日からは義務的に適用されている。そして7月1日からは労働者5人から50 人未満の企業にまで拡大適用されることになる。

 

 勤労基準法によると、1週間は休日を含む7日を意味し、1週間の法定労働時間は40 時間だが、使用者と労働者間の合意により、12 時間の延長労働・休日労働が可能となる。これを受け、1週間の労働時間は最大52 時間に制限されている。

 

 1週間に12 時間を超過する延長労働は、当事者間合意をしても強行規定違反で認められておらず、週52 時間労働時間違反の場合、2年以下の懲役または2,000万ウォン(約196 万7,000 円)以下の罰金を賦課するようになっているため、罰則が相当重いと言える。

 

 法第53 条第4項では「特別な事情」がある場合、1週間に12 時間を超える追加延長労働が可能になるように特別延長労働認可制度を規定しているが、労働者の同意および雇用労働相の認可を必要としており、条件がかなり厳しい。ただし、30 人未満の企業に対しては22 年12 月31 日までは特別延長労働を期限付きで認めている。

 

 このように週52 時間の拡大適用によって中小企業にとっては負担になると思われるが、法に規定している柔軟な労働時間制を導入することで、その衝撃を緩和することができるだろう。

 

 柔軟な労働時間制とは、労働時間の決定および配置などを弾力的に運営できるようにする制度で、業務量の多少によって労働時間を適切に配分したり、フレックスタイム制度のように労働者の選択に任せることで、労働時間を柔軟かつ効率的に運営することが可能だ。

 

 法によると、弾力的労働時間制や選択的労働時間制などが適用可能で、労働時間の算定が難しい場合には、別途に定めた時間を労働時間として認める事業場外のみなし労働時間制、裁量労働時間制などが導入できる。

 

 柔軟な労働時間制を導入する場合、各制度別に就業規則の変更または労働者代表との書面合意などの要件がある。各企業では柔軟な労働時間制を導入する場合、適法な手続きによるものであり、就業規則などに細部の運営規定を設け、労使間の争いの余地を最小限に抑えなければならない。

 

 2週間以内の弾力的な労働時間制は、就業規則の作成・変更が必要であり、就業規則の変更の際、労働者過半数または労働組合などの意見を聞かなければならず、労働者に不利益な変更には労働者過半数の同意が必要である。3カ月以内または3~6カ月単位の弾力的労働時間制は労働者代表または労働組合との書面合意が必要だ。

 

 選択的労働時間制、事業場外のみなし労働時間制、裁量労働時間制も労働者代表と書面での合意が必要であり、必要によっては就業規則まで全て変更しなければならない。

 

 労使合意に基づき就業規則が変更されたときは、雇用労働相(地方雇用労働官署長)に届け出なければならない。上記の合意は必ず書面で作成し、労使当事者が署名または押印しなければならず、合意書類は合意日から3年間保管しなければならない。

 

 もはや週52 時間労働時間制は5人以上の全ての企業に適用される。国内の多くの企業が50 人未満の小規模企業で週52 時間制に一日でも早く適応しなければならないだろう。

 

 法による柔軟な勤務制度などを導入すれば、ある程度は適応に役立つものと予想されるため、企業は積極的に検討する必要があるだろう。

 



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筆者紹介>
信和会計法人は、2003年設立され、韓国進出を目指している企業、または進出済みの日本企業向けに、法人の設立に関するご相談及び設立代行、会計、税務、給与サービス、支給代行サービス、会計監査、デューデリジェンス(Due Diligence)サービス等を提供しております。大手会計法人の日本事業部出身のベテラン会計士を中心に設立され、豊富な経験とノウハウを活かし日系企業のクライアント様に最善のサービスを提供しております。
今回の担当:張太日(チャン・テイル)公認会計士(韓国)。サンダーバード(Thunderbird)経営大学院でMBA。英和会計法人(現在、Ernst&Young韓英会計法人)にて勤務。日本太田昭和監査法人(現在、新日本有限責任監査法人)にて派遣勤務。現在は信和会計法人の国際部代表。(TEL: 02-555-9211/E-mail: tichang@swacc.com)


<出典:NNA ASIA アジア経済ニュース、2021.6.10 https://www.nna.jp/>



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