韓国の税務・会計資料

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August 27, 2021
by swacc

2022年度の財務諸表重点審査項目の事前予告

2022年度の財務諸表重点審査項目の事前予告


 韓国の金融監督院と公認会計士協会は最近、2022年度財務諸表審査時に重点点検すべき4つの会計イシューをそれぞれ選定し、発表した。

 企業が開示した財務諸表は毎年審査を受けることになるが、上場会社は主に金融監督院で審査を行い、非上場会社は公認会計士協会で審査を行っている。今回、両機関がそれぞれ発表した重点点検分野は同じ分野もあり、違う分野もある。この重点審査項目は企業が21会計年度の決算において特に注意すべき項目であるので、簡単に見てみることにしよう。

 まず、上場企業が注意すべき重点点検項目は、1)従属・関係企業の投資株式に対する損傷処理、2)特殊関係者に対する収益認識、3)金融負債認識および測定、4)営業利益表示および営業部門情報開示――の4分野だ。

 1)と2)の関係会社の株式評価および特殊関係者取引を重点項目として選定したことは、業績悪化が懸念される現状において、損傷の検討を恣意(しい)的に行い、または特殊関係者取引により損益を歪曲しようとする会計処理を防止する目的であり、従属会社、関係会社、投資会社の比重が高い企業については、特に注意が必要である。

 3)の金融負債を重要点検項目とした理由は、株主間約定(合併・買収=M&A、資金調達など)および支払保証契約などに関わる金融負債が適正に計上されているかどうか、ならびに経営活動に重大な影響を及ぼす金融約定などの関連注釈などの漏れがあるかどうかを点検しようとする目的である。

 また、新しく適用されるK―IFR第1109号および第1107号による金融負債の認識および測定ならびに関連注釈記載が適正に行われているかどうか点検しようとする理由もある。

 従って、21会計年度の決算時には負債などが適正に計上されているかどうか、および金融リスクなどの注釈要求事項などが適正に開示されているかを改めて検討しなければならない。

 4)の営業利益表示を重要点検対象としたのは、財務構造が脆弱(ぜいじゃく)な会社が管理銘柄指定回避などの目的で営業利益を過大計上する蓋然(がいぜん)性があり、かつ特定事業部門の資産損傷を回避しようと部門別の営業利益を操作して開示しようとする企業を摘発することが目的である。特に、財務構造が脆弱な法人においては、主たる営業活動の適切な分類と部門別の情報などについての開示を改めて十分に検討すべきであろう。

 次に非上場会社が注意すべき重点点検項目は、1)特殊関係者取引会計処理および注釈開示の適正性、2)棚卸資産会計処理の適正性、3)持分法適用投資株式の会計処理適正性、4)繰延法人税資産・負債認識適正性――の4分野である。

 1)と3)の特殊関係会社株式評価と特殊関係者取引を重点点検項目として選定したのは、上場会社の重点点検項目の選定理由と同様である。ただ、適用会計基準が異なり、非上場会社の特性があるため、点検方向が若干異なるといえる。

 まず、非上場会社の中で特殊関係者への貸付金が多い会社、特殊関係者間の仕入・売上が多い企業は、取引金額、債権債務の残高だけでなく、注釈などの開示にも改めて注意を払うべきである。

 また、有意的な影響力を有する被投資企業に対しては、持分法を適用して会計処理を行わなければならず、この時、被投資会社の財務諸表が企業会計基準に従って適正に作成されたかどうかに関する信頼性検証の責任が投資会社にあることに特に留意しなければならない。

 2)の棚卸資産評価問題を重要点検項目に選定したのは、新型コロウイルスなどによる企業環境の変化により、棚卸資産が急激な価値下落および陳腐化の危険などにさらされるにもかかわらず、棚卸資産を低価格法で評価しないことにより、純実現可能価値と帳簿金額の差を当期損失に反映せず会社実績および財務状態を良好に維持しようとする会計処理を防止する目的であると考えられる。

 4)繰延税金項目の点検は非上場企業の場合、繰延税金関連の会計処理基準の複雑性により誤りが発生する可能性が高く、また、景気低迷および企業環境悪化により今後課税所得の発生可能性が高くないにもかかわらず、負債比率減少などの目的で繰延税金資産を認識することや、繰延税金負債を認識しなければならないにもかかわらず、繰延税金負債を認識しない会計処理を防止することが目的である。

 22年度の会計点検重点項目を見ると、コロナ事態による景気低迷による個別企業の会計処理の歪曲を防止する目的が多く反映されているようで、特に特殊関係者取引による利益歪曲の点検に重点を置いたものとみられる。コロナ禍で利益を得ている業種もあるが、多くの企業は相当な被害を受けている。継続するパンデミック(世界的大流行)によって利益歪曲への誘引は多いだろうが、これによって監督当局からの監視も増加するだろうから、各企業は今回当局が発表した重点点検項目を中心にもう一度決算政策を見直すべきである。

 

<筆者紹介>

信和会計法人は、2003年設立され、韓国進出を目指している企業、または進出済みの日本企業向けに、法人の設立に関するご相談及び設立代行、会計、税務、給与サービス、支給代行サービス、会計監査、デューデリジェンス(Due Diligence)サービス等を提供しております。大手会計法人の日本事業部出身のベテラン会計士を中心に設立され、豊富な経験とノウハウを活かし日系企業のクライアント様に最善のサービスを提供しております。
今回の担当:張太日(チャン・テイル)公認会計士(韓国)。サンダーバード(Thunderbird)経営大学院でMBA。英和会計法人(現在、Ernst&Young韓英会計法人)にて勤務。日本太田昭和監査法人(現在、新日本有限責任監査法人)にて派遣勤務。現在は信和会計法人の国際部代表。(TEL: 02-555-9211/E-mail: tichang@swacc.com)

 

<出典:NNA ASIA アジア経済ニュース、2021.7.8 https://www.nna.jp/>



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