韓国の税務・会計資料

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January 26, 2018
by swacc

韓国における社会保険制度

韓国における社会保険制度

 

韓国での勤務やビジネスなどで韓国に滞在している外国人なら韓国の社会保障制度について知っておく必要があると思います。現在、世界の多くの国々で社会保障制度が施行されていますが、韓国にも多様な社会保障制度があります。分類としては社会保険制度、公的扶助、社会福祉サービス、社会福祉関連法、その他社会福祉制度などに分けることができます。このうち社会保険制度には国民年金、雇用保険、健康保険、労災保険がありますが、これらの保険は政府の管掌で加入が義務付けられているものです。この四つの保険は韓国ではいわゆる4大保険と呼ばれており、勤労者を雇う事業主も一定の金額を負担する保障制度ではありますが、事業主にとっては給料のほかに雇用により追加的に発生するコストとして認識されるものです。

 

 

民年金

 

国民年金は、引退後最低限度の生活を営むことができるよう、所得のある国民を対象に国が加入を義務付けている保険です。一定の年齢(老齢年金の受給開始年齢:1969年以降に生まれた人は65歳、早期老齢年金の受給開始年齢:1969年以降に生まれた人は60歳)から一生年金を受給するためには少なくとも10年(120か月)以上保険料を納付しなければならず、10年間納付した場合は納付した基本年金額と物価上昇分、扶養家族年金額、利子などを合計して年金として受給することとなります。もし納付期間である10年(120か月)を満たしていない場合は、年金の代わりに脱退一時金に当たる「返還一時金(納入した金額+利子)」を受け取ることができます。外国人でも韓国人と同様に国民年金の受給要件を満たした場合は国民年金法で定めている年金すべてが受給できます。ただし、一部の社会保障協定や相互主義が適用される国、そして在留資格のE-8,E-9,H-2を持つ外国人加入者に限っては帰国する際返還一時金の受給ができます。しかし、日本人の場合は社会保障協定や相互主義が適用されないため在留資格のE-8,E-9,H-2を持つ人だけが返還一時金の受給が可能となります。

国民年金の納付金額は所得の9%となっており、勤労者の場合は保険料の半分に当たる4.5%を雇用主が負担しますが、個人事業者やフリーランス等は個人が全額を負担することとなっております。支給する年金額は、保険料の積み立てや韓国国民全体の平均所得を考慮したうえで決まりますが、所得の低い人ほど納付した金額に比べ比較的高い年金を受給する仕組みとなっております。

 

 

雇用保険

 

雇用保険においては勤労者一人以上を雇用するすべての事業が適用対象となり、加入が義務付けられています。ただし、満65歳以上で新規採用された人や一か月間で60時間未満働く人、D-7やD-8の在留資格を持つ外国人勤労者の場合は適用が除外されます。そして雇用保険に加入している勤労者は在職期間中または退職後様々な給付を受けることができます。在職中は職業能力開発訓練を受講する場合給付金が支給されるうえ、産前産後休業による出産手当金及び育児休業給付金などを受給することができます。退職した後は再就職するための教育訓練給付金の受給ができるうえ、特定の事由により離職した場合は失業手当の受給ができる資格が与えられます。勤労者は毎月所得の0.65%を、雇用主は最低0.9%(業種や従業員数により引き上げられることもある)を保険料として納入し、加入期間を問わず(失業手当は除く)いろいろな給付を受けることができます。ただし、失業手当を受給するには雇用保険への加入期間が最低180日以上、つまり約6か月以上働かなければなりません。また、失業手当は自ら退社した場合は受給できず、会社の経営悪化などによる「非自発的退職」をした場合に限って受給が可能となります。失業手当の給付日数は退職当時の年齢と雇用保険の被保険者であった期間等により最低90日から最大240日までです。失業手当の受給ができる期間は退職した日の翌日から12か月以内で、給付金額は原則として退職した日の直前の3か月に支払われた平均賃金の5割で上限額と下限額が定められています。

 

健康保険

 

韓国国民であれば誰もが加入しなければならない健康保険は所得に応じて保険料を納付し、給付は同じく受けられるのが特徴です。韓国における健康保険の保険料算定方式は職場加入者と地域加入者で異なります。職場加入者の場合は健康保険料として所得の6.12%(勤労者3.06%+使用者3.06%)、長期療養保険料として健康保険料の6.55%(2016年基準)を納付します。一方、地域加入者の保険料算定方式は世帯の年間課税所得が500万ウォンを超えるか超えないかによって異なります。

外国人登録を済ませた外国人は健康保険に加入するのが義務となっており、給付は韓国人と同じく受けられます。ただし、一部の在留資格(D-7、D-8など)を持つ外国人は加入除外を申し込むこともできます。

 

 

労災保険

 

労災保険においては勤労者を一人でも使用する事業場であれば自動的に加入対象となり、保険料は全額事業主負担とされているので勤労者の負担は全くありません。労災保険において最も重要なのは労災に該当するかどうかを判断することで、業務上災害により勤労者が負傷した場合、疾病にかかった場合、障害が残った場合、死亡した場合等が対象となります。災害の認定基準としては勤労契約による業務中に起きた事故、施設物の欠陥や管理不備による事故、事業主が提供した交通手段による通勤中の事故、事業主が主催する行事の準備中に起きた事故などを挙げられます。

上記の4大保険においては会社が加入と脱退の届け出の義務を負うこととなるので、退職した人は脱退手続きをする必要がありません。したがって、事業主は4大保険の加入、源泉徴収、納付及び脱退に係る手続きなどを徹底的に行い、不利益を被ることがないよう注意しなければなりません。

 

 

<筆者紹介>

信和会計法人は、2003年に設立され、韓国進出を目指している企業、または進出済みの日本企業向けに、法人の設立に関するご相談および設立代行、会計、税務、給与サービス、支給代行サービス、会計監査、デューデリジェンス(Due Diligence)サービス等を提供しております。大手会計法人の日本事業部出身のベテラン会計士を中心に設立され、豊富な経験とノウハウを活かし、日本企業のクライアント様に最善のサービスを提供しております。

 

今回の担当: 張太日(チャン・テイル)公認会計士(韓国)。1963年生まれ。サンダーバード(Thunderbird)経営大学院でMBA取得。1989年~2003年に英和会計法人(現在、Ernst&Young韓英会計法人)にて勤務。1994年~1995年に日本太田昭和監査法人(現在、新日本有限責任監査法人)に派遣勤務。現在は信和会計法人の国際部代表。E-mail:tichang@swacc.com



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