韓国の税務・会計資料

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July 15, 2019
by swacc

会計監督の先進化の方案

会計監督の先進化の方案

 

 サムスンバイオロジックスの粉飾決算の問題は未だに続いている。検察では粉飾決算の調査を続けている。しかし、行政裁判所では粉飾決算と断定しにくいとしながら金融監督院の制裁の効力を停止している。国際会計基準(IFRS)では一件の取引に対して企業の判断により多様な会計処理が可能であるが、現在のような規制中心の会計監督システムの下では第2のサムスンバイオ事態がいつでも再発する可能性があると多くの会計専門家は予想している。

 また、昨年から会計先進化法が施行され、監査対象の拡大、監査人の責任強化などによって去る3月にはアシアナ航空の限定監査意見の表明のような不適正会計監査意見が急増した。これに加えて、来る11月頃からは同一監査人から6年以上継続して会計監査を受けた上場企業に対しては金融監督院が3年間、監査人を指定することとなる。これにより来年から監査人が指定される上場企業は、サムスン電子を始め、220余社に及ぶ。又、内部会計管理制度の監査の義務化、標準監査時間制度の導入によって、会計監査費用の上昇、不適正監査意見の増加、企業の内部会計管理制度に対する準備不足、会計法人の監査失敗など、会計監査市場での混乱が予想される。


 金融監督院は先月、このような会計市場の混乱を防止するために会計監督先進化方案を発表した。その重要内容は、企業会計監督方式の先進化、企業の会計処理力量への支援強化、外部監査品質を高めるための監督力量の強化という三つの改善方案であった。現行の摘発と制裁中心の監督方式を、事前指導を主とする‘審査(review)’に変えるということである。軽微な会計処理基準の違反である場合は、修正開示の勧告で終結し、重大な違反(故意、重過失)である場合だけ強度の高い監理を実施するということである。そして企業の会計処理力量を強化させるために会計基準に対する質疑応答の活性化と質疑応答集の発刊する計画を発表した。また、会計監理の時、争点事項の質疑窓口増やした。今まで金融監督院だけが質疑可能な窓口だったことをを、会計基準院も質疑応答の可能な窓口に追加して企業の会計処理力量を支援することとした。また、外部監査品質を高めるための方案として会計法人に対し、常時監査制度を誘導することとした。即ち、既存の会計基準の違反事項摘発のための監督ではなく、会計法人が監査対象企業別の監査危険を顧慮して監査手順を効率的に設計、履行しているかを監督するという方案である。監督方式を変えて会計法人が常時監査が可能な体制に変えるということだ。


まだ、一部の中小上場法人はIFRSを適用して独自に財務諸表を作成する能力が足りないことが現実である。また、今まで企業は会計基準の制定、解釈、制裁など、全ての面で政府の影響力が大きい環境で活動して来たため、新しい会計基準、新しい会計監査環境、会計監督環境に適応するには相当の時間と苦痛が伴うと思われる。企業と監督当局、会計法人が新しい会計制度の導入が軟着陸できるようにお互い円滑な意思疎通をしながら協調していくべきである。

 

<筆者紹介>

信和会計法人は、2003年設立され、韓国進出を目指している企業、または進出済みの日本企業向けに、法人の設立に関するご相談及び設立代行、会計、税務、給与サービス、支給代行サービス、会計監査、デューデリジェンス(Due Diligence)サービス等を提供しております。大手会計法人の日本事業部出身のベテラン会計士を中心に設立され、豊富な経験とノウハウを活かし日系企業のクライアント様に最善のサービスを提供しております。
 

今回の担当:張太日(チャン・テイル)公認会計士(韓国)。1963年生まれ。サンダーバード(Thunderbird)経営大学院でMBA取得。1989年~2003年に英和会計法人(現在、Ernst&Young韓英会計法人)にて勤務。1994年~1995年に日本太田昭和監査法人(現在、新日本有限責任監査法人)にて派遣勤務。現在は信和会計法人の国際部代表。(TEL: 02-555-9211/E-mail: tichang@swacc.com)



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