韓国の税務・会計資料

韓国の税務・会計資料

  • > home - 韓国の税務・会計資料

August 12, 2019
by swacc

一般企業会計基準における人件費の会計処理

一般企業会計基準における人件費の会計処理

 

韓国の一般企業会計基準第21章(従業員給与)によれば、従業員の給与は退職給付以外の従業員給与及び退職給付に区分される。退職給付以外の従業員給与は賃金、国民年金といった社会保障保険の会社負担分、利益分配金、賞与、現職従業員のための非貨幣性給付(医療、住宅、自動車など)、早期退職のインセンティブである名誉退職金等をいう。このような給与は発生主義によって支給した金額に未払費用、前払費用を追加計上し、資産の原価を構成する場合を除き費用として認識する。発生主義に関連して注意すべき給与として、年次有給休暇手当の認識問題がある。会社によって年次有給休暇の使用促進制度を施行していない場合は、期末に付与された全ての年次日数に対して未払費用を認識、年次有給休暇の使用促進制度を施行している場合は、使用促進により報償されないと予想される日数を除いた年次日数を適用し、未払費用を認識する点に注意する必要がある。

退職給付は確定寄与制度(確定拠出年金)及び確定給与制度(確定給付年金)に区分される。確定寄与制度で運営する場合、支給した給与は費用又は原価として認識、未払い給与は未払費用、前払い給与は前払費用として認識し、退職年金運用資産及び退職給付引当金、退職年金未払金は認識しない。確定給与制度の場合、報告期間末に全ての従業員が一時に退職するとみなした場合に支払うべき退職金相当額を退職給付引当金として認識する。確定給与制度で運営される資産は貸借対照表に退職年金運用資産として計上し、退職給付引当金から差し引く形で表示する。

上記のように一般企業会計基準(一般基準)上の人件費の会計処理は韓国採択国際会計基準(国際基準)と比較すると、次のような違いがある。一般基準上では退職一時金制度や年金制度を並行して退職給付引当金を認識するが、国際基準では退職給付引当金はおらず、全て退職年金の会計処理をしている。退職給付債務の測定においても一般基準では清算概念で測定するが、国際基準では予測概念を採択し、保険数理的方法で測定する。また、勤続1年未満の場合、一般基準では退職給付を認識しないことが一般的だが、国際基準では勤続1年未満の場合でも退職給付を認識する。社外積立資産の場合、一般基準では測定に対する別途規定はないが、国際基準では公正価値で評価するようにしている。また、社外積立資産で発生する利息収益などは一般基準では営業外収益で処理するが、国際基準では退職給付費用から差し引いて表示するようにしている。上記のように韓国の人件費の会計処理について概観してみた。韓国では国際会計基準を適用している上場企業と一般企業会計基準を適用している非上場企業は財務諸表の直接比較が難しい。従って、一般基準を把握した上で、国際基準との違いを理解しておくと財務諸表の分析に役立つと思う。

 

 

<筆者紹介>

信和会計法人は、2003年設立され、韓国進出を目指している企業、または進出済みの日本企業向けに、法人の設立に関するご相談及び設立代行、会計、税務、給与サービス、支給代行サービス、会計監査、デューデリジェンス(Due Diligence)サービス等を提供しております。大手会計法人の日本事業部出身のベテラン会計士を中心に設立され、豊富な経験とノウハウを活かし日系企業のクライアント様に最善のサービスを提供しております。

 

今回の担当:張太日(チャン・テイル)公認会計士(韓国)。1963年生まれ。サンダーバード(Thunderbird)経営大学院でMBA取得。1989年~2003年に英和会計法人(現在、Ernst&Young韓英会計法人)にて勤務。1994年~1995年に日本太田昭和監査法人(現在、新日本有限責任監査法人)にて派遣勤務。現在は信和会計法人の国際部代表。(TEL: 02-555-9211/E-mail: tichang@swacc.com)



  • List