韓国の税務・会計資料

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June 10, 2024
by swacc

損益計算書の営業損益範囲の変更


損益計算書業損益範変更


 国際会計基準(IFRS、International Financial Reporting Standards)を制定している国際会計基準委員会(IASB、International Accounting Standards Board)は、2024年4月9日付けで財務諸表に表記される情報の有用性を高める目的で、新しい基準IFRS 18 Presentation and Disclosure in Financial Statements(財務諸表の表示と公示)を発表した。 この基準は、現行のIFRSでは別途に定義していない営業利益を投資と財務を除いた全ての範疇で定義することによって、従来の国内会計基準(K-IFRS)の区分とは異なることになる。 金融監督当局がIFRS18をそのまま導入すれば、一般企業は損益を投資損益、財務損益、法人税費用、中断事業損益、そしてこれらの区分に属さないすべての損益を営業損益に区分して表示することになる。 この基準は、2027年1月1日以降に開始する会計年度から適用することになるが、企業では早期適用することもできる。 また、3ヵ年度の比較表示が一般的なことを考慮すれば、企業は2025年度から準備をしなければならないものと見られる。 このIFRS 18 は、既存のIAS 1 (International Accounting Standards 1) Presentation of financial statementsを代替することになるが、また変更されないIAS 1 条文は引き続き適用することになる。


 IFRS18によると、企業は投資損益、財務損益、法人税費用、中断事業損益を除いたすべての収益と費用を営業損益と規定して公示することになる。 すなわち、従来のIFRSにはなかった営業損益概念を新たに適用することなので、欧米系企業では新しい基準を適用すれば良いが、すでに売上高、売上原価、販売費と管理費、営業損益などで表示してきた国内企業がこれを導入すれば、初期に若干の混乱が発生する可能性もある。 既存の営業損益、営業外損益の区分はなくなることになり、営業損益、財務損益、投資損益の区分が生じるものと考えられる。 これまでK-IFRSで営業外損益に分類していた有·無形資産処分損益、各種損傷差損、寄付金、外国為替損益、雑損益などいろいろなその他損益項目がIFRS18では営業損益項目に含まれるものと見られる。


 IFRS18の区分基準によると、何が営業損益に該当するかに対する企業の恣意的判断を排除できるという長所があるだろう。 企業の財務、投資活動以外の活動はすべて営業損益に区分されるので、企業と監査人間の意見衝突も減り、企業間の比較可能性、国家間の比較可能性も向上するだろう。


 しかし、有形·無形資産処分損益、雑利益、雑損失などのような非経常的な項目が営業利益に含まれるか、事業持株会社の場合、子会社の持分処分損益または巨額の損傷差損も営業損益に含まれる可能性があり、営業損益が歪曲される可能性もある。 また、外国為替関連損益の場合には、企業の主な営業活動から発生することもあり、財務活動、投資活動からも発生する可能性があり、実務適用における具体的なガイドラインが必要と見られる。 金融当局と企業間の多様な問題提起とこれに対する意見収斂を経て、新しい会計基準の導入と適用における混乱を最小化しなければならないだろう。


<筆者紹介>
信和会計法人は、2003年設立され、韓国進出を目指している企業、または進出済みの日本企業向けに、法人の設立に関するご相談及び設立代行、会計、税務、給与サービス、支給代行サービス、会計監査、デューデリジェンス(Due Diligence)サービス等を提供しております。大手会計法人の日本事業部出身のベテラン会計士を中心に設立され、豊富な経験とノウハウを活かし日系企業のクライアント様に最善のサービスを提供しております。
今回の担当:張太日(チャン・テイル)公認会計士(韓国)。英和会計法人(現在、Ernst&Young韓英会計法人)にて勤務。日本太田昭和監査法人(現在、新日本有限責任監査法人)にて派遣勤務。現在は信和会計法人の国際部代表。(TEL: 02-555-9211/E-mail: tichang@swacc.com)


<出典:NNA ASIA アジア経済ニュース、2024.5.9 https://www.nna.jp/>



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