韓国の税務・会計資料

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November 15, 2024
by swacc

金融機関の内部統制義務強化と責務構造図


金融機関内部統制義務強化責務構造図


 銀⾏、証券会社、保険会社等の⾦融会社の内部統制を強化する目的で改正された「⾦融会社の⽀配構造に関する法律(通称⽀配構造法)」が2024 年7⽉2⽇から施⾏されている。改正⽀配構造法によると、⾦融会社の代表取締役および役員は、組織内で責任と権限の分配を明確にする道具である責務構造図を提出することになっている。最初に責務構造図を提出した以後から役員は関連責務に対して内部統制および危険管理などが効果的に作動できるよう「内部統制管理義務」を負担し、義務に違反した役員は⾝分上制裁を受けるなど役員の内部統制管理責任が⼤幅に強化された。


 さまざまな形態の⾦融会社は、その⾦融業の種類と資産総額、運⽤財産などの基準によって責務構造図の提出時期が異なる。各銀⾏と⾦融持株会社は25 年1⽉2⽇、その他の⾦融会社は⾦融業の形態、資産総額、運⽤財産などの基準によって、遅くとも27 年7⽉2⽇までには責務構造図を⾦融当局に提出しなければならない。責務構造図は代表理事、役員などが⽤意して理事会議決を経て確定し、理事会議決⽇から7⽇以内に⾦融当局に提出しなければならない。また、責務構造図上の役員の変更、役員職責の変更、役員責務の変更または追加などが発⽣した場合には、責務構造図を変更し、理事会の議決を経て⾦融当局に再び提出しなければならない。代表取締役、役員などは内部統制基準が適正に設けられて効率的に執⾏されているか、また内部統制基準違反時に是正および改善措置などが適正に⾏われているかを管理する義務を持つことになる。役員などがこのような管理義務を怠った場合には解任、免職、停職などの措置を受けかねないなど役員の⾝分上の制裁が厳格になったと⾔える。


 これに対し⾦融当局は7⽉に責務構造図に基づいた内部統制管理体系を早期に安定的に定着できるよう試験運営期間を導⼊し、試験運営に参加した企業には監督当局がコンサルティングを提供し、同期間中の管理義務違反などに対しても制裁しないなどインセンティブを付与すると発表した。すなわち、24 年10 ⽉31 ⽇までに責務構造図を提出した銀⾏および持株会社に対しては、責務構造図に対する点検および諮問などのコンサルティングを実施する予定であり、試験運営期間中には内部統制管理義務などが完璧に遂⾏されない場合にも⽀配構造法による責任を問わない予定であり、責務構造図に基づいた内部統制管理体系の試験運営をする過程で所属役職員の法令違反などを⾃ら摘発・是正した場合、関連制裁措置に対しては減軽または免除する予定だと発表した。


 これに対し、10 ⽉31 ⽇まで試験運営に参加して責務構造図を提出した⾦融機関を⾒れば、新韓⾦融持株などの9つの⾦融持株会社と新韓銀⾏などの9つの銀⾏が参加したことが分かった。最近数年間に巨額の⾦融事故が発⽣した銀⾏は、テスト運営に積極的に参加したものと⾒られるが、カカオバンクなどのネット銀⾏などはテスト運営に参加していないものと⾒られる。試験運営には参加しなかったとしても、25 年1⽉2⽇までには責務構造図を提出しなければならないため、近いうちに提出するものと⾒られる。


 責務構造図は、各構成員の役割と責任が明確になり、これによって透明性が⾼まり、消費者保護が強化され、したがって⾦融市場の安定性まで役⽴つものと予想されるが、責務構造図を法にまで強制し、⾦融機関の内部統制を強化しようとする試みは少しやり過ぎな感じがするのも事実だ。すなわち、さまざまな⻑所も予想されるが、⾦融会社に対する規制がもう1つ追加され、⾦融機関が政府の顔⾊を伺うようになり、各種規制の複雑性の増加で意思決定が遅くなり、規定された責任以外には責任を回避しようとする傾向が発⽣しかねないという問題と、このような⾊々な問題による競争⼒が低下しかねない問題、規制遵守のための内部費⽤の増加という短所もまた予想される。予想されるさまざまな⻑所と短所を考慮しながら、監督当局と⾦融機関は運営の妙を⽣かしていかなければならないだろう。


<筆者紹介>
信和会計法人は、2003年設立され、韓国進出を目指している企業、または進出済みの日本企業向けに、法人の設立に関するご相談及び設立代行、会計、税務、給与サービス、支給代行サービス、会計監査、デューデリジェンス(Due Diligence)サービス等を提供しております。大手会計法人の日本事業部出身のベテラン会計士を中心に設立され、豊富な経験とノウハウを活かし日系企業のクライアント様に最善のサービスを提供しております。
今回の担当:張太日(チャン・テイル)公認会計士(韓国)。英和会計法人(現在、Ernst&Young韓英会計法人)にて勤務。日本太田昭和監査法人(現在、新日本有限責任監査法人)にて派遣勤務。現在は信和会計法人の国際部代表。(TEL: 02-555-9211/E-mail: tichang@swacc.com)


<出典:NNA ASIA アジア経済ニュース、2024.11.14 https://www.nna.jp/>



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