韓国の税務・会計資料

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September 26, 2025
by swacc

会計不正の制裁強化


計不正の制裁


 韓国証券先物委員会は8月末に会計不正の制裁強化案を発表した。証券先物委員会は、韓国の金融政策を総括する金融委員会の傘下委員会で、主に資本市場の監視、会計監理機能を遂行している機関だ。今回の会計不正制裁強化案は、新政府の主要公約事項である証券市場活性化案の1つで、虚偽公示などの不正競争要素を除去し、企業の会計透明性を高める目的で推進されると言える。


 今回の会計不正制裁強化案は大きく2つに分かれて推進されている。1つ目は、重大な会計不正に対するペナルティーを強化するものの、刑事処罰を強化することはせず、会計不正に関連した個人、法人に対する課徴金を大幅に引き上げる案。もう1つは企業の会計不正監視システムである内部監査(監査委員会、監査役)、会計法人による外部監査、金融当局による審査・審理制度が効果的に作動するように外部監査妨害行為への制裁を加重するなど監視体系が円滑に作用できるようする案だ。会計不正に関するペナルティーを強化するものの、刑事処罰ではなく課徴金を引き上げる方向で推進するのは、サムスンバイオロジクスの会計粉飾論議で見たように、国際会計基準(IFRS)を適用している韓国の企業に会計判断事項と見られる事項に刑事処罰まで強化するということは、企業の経済活動をあまりに萎縮させかねないという憂慮を反映したものだと言える。


 会計不正制裁強化方案の主要内容は監査資料の偽変造、隠蔽(いんぺい)・操作など市場信頼を傷つける故意粉飾会計に対しては横領・背任、不公正取引関連事件と同じ最高水準に課徴金金額を引き上げ、会計不正が長期間持続する場合、違反期間と形態により課徴金を加重するという。すなわち、会計違反が「故意」でありながら違反期間が「1年」を超過する場合、超過する1年当たり課徴金を「30%ずつ」加重し、「重過失」である会計違反に対しては違反期間が「2年」を超過する場合、超過する1年当たり課徴金を「20%ずつ」加重して適用するという。また、会計不正会社の所属ではなくても会長、関係会社役員など実質的に会計不正を指示した責任者にも課徴金を賦課できるよう関連法令を改正する予定であり、会計不正に対する責任がある個人にも課徴金賦課限度を大幅に引き上げるという。


 現在、会計透明性確保のために内部監査機構(監査委員会、常勤監査など)、外部監査、当局の会計審査・監理制度を運営中であるが、正当な理由なしに資料要求の不応および会計誤り訂正要求の不応または資料偽造変造、現場調査拒否などの会計監視制度を無力化させる不法行為が持続的に繰り返されている。これに対し、会計監視体系が正常に作動できるよう「内部監視機構(監査委員会・監査)の会計監視妨害」「監査人の外部監査妨害」「当局の財務諸表審査・監理妨害」発生時には故意粉飾会計に対する措置と同じ水準で強力に制裁する計画だという。


 今回発表された会計不正制裁強化案は、外部監査法、施行令、施行細則などの関連法令を改正し、2026 年上半期から施行する予定だという。会計不正に対する制裁強化は、企業の透明性を高め、証券市場の活性化を図る案の1つにはなり得るが、本質的には企業の競争力強化があってこそ証券市場が活性化すると言える。最近の政策を見ると、政府が資本市場の活性化という一貫性を持って推進しているのかについては疑問が生じる。


<筆者紹介>
信和会計法人は、2003年設立され、韓国進出を目指している企業、または進出済みの日本企業向けに、法人の設立に関するご相談及び設立代行、会計、税務、給与サービス、支給代行サービス、会計監査、デューデリジェンス(Due Diligence)サービス等を提供しております。大手会計法人の日本事業部出身のベテラン会計士を中心に設立され、豊富な経験とノウハウを活かし日系企業のクライアント様に最善のサービスを提供しております。
今回の担当:張太日(チャン・テイル)公認会計士(韓国)。英和会計法人(現在、Ernst&Young韓英会計法人)にて勤務。日本太田昭和監査法人(現在、新日本有限責任監査法人)にて派遣勤務。現在は信和会計法人の国際部代表。(TEL: 02-555-9211/E-mail: tichang@swacc.com)


<出典:NNA ASIA アジア経済ニュース、2025.9.11 https://www.nna.jp/>



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