韓国の税務・会計資料

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November 14, 2025
by swacc

税務調査方式の改善


務調査方式の改


 韓国国税庁は9月30 日、韓国の中小企業中央会との懇談会で現場常駐方式の税務調査パラダイムを変えるという税務調査革新方案を発表した。これまで定期税務調査は、調査期間中に納税者の業務空間に常駐し、調査を進める現場調査方式が一般的だった。だが、業務が集中する時期に数カ月ずつ税務調査チームが出ていれば、会社固有業務と税務調査対応を並行しなければならないので、職員が感じる心理的圧迫感が大きかったという現場の不満の声も多かった。また、税務調査のための別途の空間を設けるのが難しい企業も多いという現実的な問題もあった。


 国税庁では税務調査革新の第一歩として、「現場常駐調査最小化」を新たな標準(New Normal)と位置付け、納税者の税務調査負担を緩和していくと発表した。その一環として、「定期税務調査」は納税者の業務空間ではなく調査官署で実施する事務室調査中心に進められるよう、企業に常駐する現場調査はできるだけ短く、必要な場合にのみ実施するようにすると説明した。すなわち、可能であれば調査する税務署の事務所で書面(FAX、電子メール)、有線等で調査を行い、企業を訪問して実施する調査は次の場合に限るとした。すなわち、営業上の秘密流出憂慮、調査官署訪問負担などで納税者の立場でむしろ現場常駐調査方式で進行することが便利な場合または資料未提出などで円滑な税務調査進行が難しい場合にのみ企業に常駐し税務調査を実施するということだ。合わせて、納税者が調査官署に提出した資料は国税基本法上の秘密維持義務によりひたすら国税の賦課・徴収目的だけで使用し、資料の保安は最高水準に維持すると強調した。一方、グローバル通商秩序再編による経済不確実性が深刻化される状況で、国税庁では中小企業が法人税控除・減免コンサルティング、研究開発(R&D)税額控除事前審査などを通じて税金問題に対する心配なしに経営活動だけに専念できるよう積極的に支援するとも明らかにした。


 今回の発表によると、その現場常駐調査を行わず、税務官署の調査官の事務室で調査を実施する対象は中小企業であるとみられ、また調査形態は定期税務調査であると理解できる。したがって大企業に対する調査、不定期調査などに対しては継続して現場常駐調査が実施されるものとみられる。


 一般的に定期調査は(1)申告内容に対する課税資料、税務情報および会計誠実度資料などを考慮し、定期的な誠実度分析の結果、不誠実の疑いがある場合、(2)最近4課税期間以上同じ税目の税務調査を受けておらず、申告内容の適正性の有無を検証する必要がある場合、(3)無作為抽出方式による標本調査を行う場合に実施する。また、不定期調査は(1)申告、誠実申告確認書・(税金)計算書および支給明細書の作成・交付・提出など納税協力義務を履行しなかった場合、(2)無資料取引、偽装・加工取引など取引内容が事実と異なる疑いがある場合、(3)納税者に対する具体的な脱税情報がある場合、(4)申告内容に脱漏や誤りの疑いを認めるに足る明白な資料がある場合、(5)納税者が税務公務員に職務と関連して金品を提供したり金品提供をあっせんしたりした場合、不定期調査対象に選定されて税務調査が実施される。


 今回の国税庁の発表を見ると、意図的な脱税でない限り、中小企業の場合は現場常駐調査を行わないものとみられる。中小企業の負担がかなり減るものとみられる。しかし、最近は統合基幹業務システム(ERP)など電算帳簿、証拠の使用が普遍化し、テレビ会議、電子メールなどが広く使われている現実では、現場調査対象と期間をもう少し縮小する案の導入も必要ではないかと思う。今回の発表は国税庁の方針による発表で、今後このような税務調査方法の転換に対する規定制定などを経て、企業が体感するまでは時間がもう少し必要になるものとみられる。


<筆者紹介>
信和会計法人は、2003年設立され、韓国進出を目指している企業、または進出済みの日本企業向けに、法人の設立に関するご相談及び設立代行、会計、税務、給与サービス、支給代行サービス、会計監査、デューデリジェンス(Due Diligence)サービス等を提供しております。大手会計法人の日本事業部出身のベテラン会計士を中心に設立され、豊富な経験とノウハウを活かし日系企業のクライアント様に最善のサービスを提供しております。
今回の担当:張太日(チャン・テイル)公認会計士(韓国)。英和会計法人(現在、Ernst&Young韓英会計法人)にて勤務。日本太田昭和監査法人(現在、新日本有限責任監査法人)にて派遣勤務。現在は信和会計法人の国際部代表。(TEL: 02-555-9211/E-mail: tichang@swacc.com)


<出典:NNA ASIA アジア経済ニュース、2025.10.16 https://www.nna.jp/>



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