韓国の税務・会計資料

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July 31, 2026
by swacc

上場廃止要件の強化と情報利用者の注意事項


上場廃止要件の強化と情報利用者の注意事項


 韓国金融委員会と韓国取引所は今年2月、「不良企業の迅速かつ厳正な退出に向けた上場廃止制度改革案」を発表した。これは、韓国新興市場(KOSDAQ市場)の信頼回復および市場改革の一環として示された「多産多死」の方針、すなわちKOSDAQ市場への新規上場は容易にする一方で、不良企業については早期に市場から退出させるという考え方に基づき、その具体的な施策を示したものである。今回発表された改革案の柱は、4つの上場廃止基準の厳格化であり、この基準は7月1日からKOSDAQ市場および韓国有価証券市場(KOSPI市場)の双方に同様に適用された。そこで本稿では、上場廃止基準の強化の内容と、投資家・情報利用者の立場から留意すべき点について簡潔に見ていきたい。


 今回7月から適用された上場廃止基準の主な内容は、次のとおりである。1.(時価総額基準の引き上げ)KOSPI市場では最低時価総額基準が300 億ウォン(約32 億円)、KOSDAQ市場では200 億ウォンへ引き上げられる。さらに、2027 年1月からはKOSPI市場で500 億ウォン、KOSDAQ市場で300 億ウォンへ追加的に引き上げられる。2.(低位株の上場廃止)株価が1,000 ウォン未満となった低位株(いわゆる「ペニー株」)については、上場廃止の対象となる。また株式併合を行う場合には、「併合後の株価が額面価格を下回る場合」についても、上場廃止基準の対象に含める。3.(半期財務諸表における完全資本欠損の追加)現行制度では、事業年度末の財務諸表において完全資本欠損となった場合のみ上場廃止基準に該当していたが、今後は半期財務諸表において完全資本欠損となった場合も、新たに上場廃止基準に追加される。ただし、この場合は企業の継続性などについて実質審査を行ったうえで上場廃止の可否が決定されるため、完全資本欠損となった時点で直ちに上場廃止となるわけではない。4.(開示違反に対する基準の厳格化)現在は、直近1年間の開示違反に対する累計ペナルティーポイントが15 点以上となった場合に上場廃止審査の対象となるが、この基準を10 点へ引き下げる。また、重大かつ故意による開示違反については、一度でも違反が認められた場合には上場廃止審査の対象とすることとした。


 上記の上場廃止基準の厳格化に加え、27 年6月までを上場廃止集中管理期間と定め、上場廃止基準の適用状況について継続的に管理・モニタリングを行っている。またKOSDAQ上場企業に対する上場廃止の実質審査において、対象企業に付与される改善期間を、従来の最長1年6カ月から1年へ短縮し、上場廃止までの所要期間を短縮した。このような基準の厳格化、集中管理および手続きの迅速化により、不良企業の上場廃止を速やかに決定できるようになれば、当初約50社と見込まれていた市場退出対象企業は、約150 社にまで増加すると予想されている。


 情報利用者の立場から見ると、時価総額基準、低位株への該当の有無、開示違反によるペナルティーポイントなどについては、韓国取引所で公表する情報から容易に確認することができる。一方、企業の財務状況や公認会計士による監査意見については、監査報告書を通じて把握する必要がある。監査報告書では、監査意見の内容に加え、債務超過(完全資本欠損)の有無や継続的な営業損失の状況などを確認することができる。しかし、監査意見が「適正意見」であっても、監査報告書の「強調事項」において「継続企業の前提(ゴーイング・コンサーン)に関する重要な不確実性」が記載されている場合がある。このような企業は、その後、上場廃止となったり、監査意見が「不適正意見」または「意見不表明」となったりする可能性が高まるため、情報利用者として特に注意を払う必要がある。


 また、財務諸表に対する監査意見と、内部統制報告制度(内部会計管理制度)に対する監査意見は、それぞれ独立して表明されるため、この点についても注意が必要である。すなわち、財務諸表に対する監査意見が適正意見であっても、内部統制に対する監査意見が不適正である場合、会社が内部統制上の不備を改善しなければ、将来的に財務諸表に重要な虚偽表示が生じ、その結果、財務諸表に対する監査意見も不適正となる可能性が高まるということである。


 最近の金融当局の動向を見ると、株式市場への新規上場と市場からの退出は、今後さらに活発になることが予想される。こうした環境の変化に対応するため、企業には一層の備えが求められる。また、情報利用者や投資家においても、企業の開示情報だけでなく、公表される監査報告書を積極的に活用し、監査意見や財務情報を十分に把握することで、投資リスクの低減に努めることが重要である。


<筆者紹介>
信和会計法人は、2003年設立され、韓国進出を目指している企業、または進出済みの日本企業向けに、法人の設立に関するご相談及び設立代行、会計、税務、給与サービス、支給代行サービス、会計監査、デューデリジェンス(Due Diligence)サービス等を提供しております。大手会計法人の日本事業部出身のベテラン会計士を中心に設立され、豊富な経験とノウハウを活かし日系企業のクライアント様に最善のサービスを提供しております。
今回の担当:張太日(チャン・テイル)公認会計士(韓国)。英和会計法人(現在、Ernst&Young韓英会計法人)にて勤務。日本太田昭和監査法人(現在、新日本有限責任監査法人)にて派遣勤務。現在は信和会計法人の国際部代表。(TEL: 02-555-9211/E-mail: tichang@swacc.com)


<出典:NNA ASIA アジア経済ニュース、2026.7.9 https://www.nna.jp/>



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